金沢文化スポーツコミッション

金沢文化スポーツコミッション

JP/EN

STORY

「弓と禅」

本を読む大拙(1956年 86才)©鈴木大拙館

日本古来の武道のひとつ弓道の奥深さを示す言葉として、“弓道は立禅である”との言もあるそうです。金沢において禅(Zen)といえば、金沢出身の哲学者・鈴木大拙が思い浮かびます。それもそのはず、ドイツ人哲学者ヘリゲルの著作「弓と禅」英語版には、なんと大拙が序文を寄せていました。

弓道と禅、鈴木大拙、金沢のつながりを感じるストーリーをご紹介します。

弓道は立禅である。

弓の世界に「射即人生」「射即生活」「射は立禅」という言葉ができた。これは、弓射によって人生を深く、また高く、豊かにする経験を指すものである。射における「胴造り」は、ちょうど座禅の立ったときの形と同じであり、立禅の姿とも言える。
人格は射によって深くなり、また高くなるに従って感情も意志も高尚となる。つまり、弓禅一致の禅的生活に化し、一箭一箭に全霊全我の統一的大自然と合致する自己を高めていくのである。
(「弓道教本第1~3巻」(全日本弓道連盟発刊)より要約引用)

鈴木大拙『弓と禅』序文

If one really wishes to be master of an art, technical knowledge of it is not enough. One has to transcend technique so that the art becomes an “artless art” growing out of the Unconscious.

Man is a thinking reed but his great works are done when he is not calculating and thinking. "Childlikeness" has to be restored with long years of training in the art of self-forgetfulness. When this is attained, man thinks yet he does not think. He thinks like showers coming down from the sky; he thinks like the waves rolling on the ocean; he thinks like the stars illuminating the nightly heavens; he thinks like the green foliage shooting forth in the relaxing spring breeze. Indeed, he is the showers, the ocean, the stars, the foliage.

-D.T.Suzuki

もし人が、本当に一芸の達人たらんと望むならば、その技の知識だけでは足りない。技を超えて、その芸が、「無心の境」から生まれてくる「芸なき芸」とならねばならぬ。弓道の場合についていえば、射手と的とは、もはや相対する二者でなくて、一つの実体なのである。

人は考える葦である。だが、人間の偉大な仕事は、彼が計算していない時、考えていない時になされる。「無心」が永年にわたる自己忘却の修練ののちに回復されねばならぬ。このことの成る時、人は考えながら、しかも考えない。彼は空から降る夕立のように考える。海原にうねる波のように考える。夜ぞらに輝く星のように考える。爽快な春風にめぐむ木の葉のように考える。実に、彼は、夕立であり、海原であり、星であり、木の葉である。

-鈴木大拙(『オイゲン・ヘリゲル「弓と禅」への序文』より 増谷文雄訳)

鈴木大拙(1870-1966)=金沢出身の哲学者、海外ではD.T.Suzukiとして知られる。禅をはじめ仏教、日本・東洋文化を広く世界に伝えた功績が高く評価されている。大拙の英著Zen Buddhism and Its Influence on Japanese Culture 前半部をまとめた日本語訳「禅と日本文化」は、大拙の代表的著作として知られ、禅と日本美術、剣道、茶道、俳句、能など広く日本文化における禅の影響を示している。大拙は、この著作において、あらゆる芸術・芸道における「無心」の状態が理想であると語っている。

オイゲン・ヘリゲル(1884-1955)ドイツ人哲学者=1924年に来日し、東北帝国大学にて教鞭を執り、その際、阿波研造から弓道を学び帰国後「弓と禅」を著作。この著作の英語版に鈴木大拙が序文を記しています。

鈴木大拙館

思索空間と水鏡の庭 ©鈴木大拙館

金沢が生んだ仏教哲学者・鈴木大拙の考えや足跡を広く国内外の人々に伝えることにより、大拙についての理解を深めるとともに、来館者自らが思索する場として利用することを目的に開設されました。

建築概要 鉄筋コンクリート造一部鉄骨造平屋建・土蔵造2階建
設計             谷口建築設計研究所 谷口吉生
所在地         金沢市本多町3-4-20
鈴木大拙館ホームページ


このストーリーは2018.10.19〜21に開催された全日本弓道遠的選手権大会でご紹介しました。

Other story

他にもこんな記事が読まれています。