金沢文化スポーツコミッション

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STORY

スポーツ交流の拠点「金沢プール」

市民スイマーの日常利用からトップアスリートの競技会まで多様なニーズをフレキシブルに受け入れる「金沢プール」。2017年4月のオープン以来多くの競技会や合宿が開催され、2023年9月にはマスターズ水泳最高峰の大会「ジャパンマスターズ2023」の舞台となります。
そこで金沢プールを管理運営する金沢プール共同事業体 総括責任者 川城智亮さんに、施設管理の苦労、大会や合宿の受け入れで気を配っていること、”文化×スポーツ”のコラボレーションへの印象などを伺いました。

■お答えいただいた方
川城 智亮(かわしろ ともあき)さん 
株式会社 日本水泳振興会
金沢プール共同事業体 総括責任者
学生時代は飛込選手として活躍

 

 

金沢プールはどんな特長がありますか。

このプールは天井が“吹き抜け”。空間的に大きく開放感があって、競泳の方は非常に泳ぎやすい、飛び込みの方は非常に飛びやすい、良いプールだと言います。外壁には金沢の木材を、更衣室の壁紙などには加賀五彩を使用し、金沢の伝統など良いところをデザインとして取り入れています。またメインプールで大会をしながらサブプールを一般開放できるのも特長です。プールだけでなく更衣室が2つあるため大会との併用利用ができ、これは全国に数施設しかありません。

川城さんの飛込選手時代のエピソードを聞かせてください。

高校時代の勇姿は地元水泳連盟機関誌の表紙を飾りました(新潟県水泳連盟発行「水泳にいがた 1999 Vol.4」)

飛込を始めたのは小学校低学年。まず市のトランポリン教室から始めて、そこで「こんなのもやってるよ」と飛込を紹介されてプールに行きました。自宅から歩いて5分のところだったので、ちょっとやってみたいっていうことで行きました。そこから大学まで続けました。
高校3年生のインターハイで飛板飛込で2位になりました。それまでインターハイで入賞はしても表彰台には上れなかったので印象に残っています。大学時代はけがもあってずっと不調でしたが、トップの選手の欠場もあり、4年の国体で3位入賞したことも非常に記憶に残っています。
選手時代は真面目にやろう、練習だけは休まずやろうと思ってずっとやっていました。ノースプラッシュが苦手で一生懸命練習した記憶があります。練習は辛かったです。屋外プールはオフシーズンがあるけれど、中学3年生のときに室内プールができて年中飛ばなきゃいけなくなった。それが嫌でした。辞めたい、なんでこんなことやってるんだろうと思いながら、でもよく続けたなと思います。

プールを管理運営するうえでどんな苦労がありますか。

コンマ数秒を争う選手たちにとってプールのコンディションはとても重要

一般市民の利用と大会の利用とを考えながらプールを管理することが難しいです。室温や水温、あと日本水泳連盟の公認ルールがあり大会はそれに沿った施設環境を提供しなければいけないので、そのバランスが難しいんです。例えばプールの水温は冷温水発生機という機械で調整しますが、それは冬は温めて夏は冷やすもので、切り換えをした段階で何もできなくなってしまいます。寒い冬は自然に冷めるから温めることはできるけど冷たくすることはできない、暑い夏は自然に温かくなるから冷やすことはできるけど温めることができないんです。市民から「もう少し温めてほしい」と言われても明日試合なのにとか、一般利用のためあまり水温を下げていないと、合宿団体から「ちょっと温かいんじゃないか」と言われたりします。選手は試合に近い環境を求めますし、バランスを取りながら管理していくのは非常に難しいです。タイムスケジュールに応じた照明の照度の切り換えなども、主催者とよく連携を取りながら行っています。いろいろ気を配りながら、競技用プールとしてのクオリティを保ちつつ一般利用も考えてプールを管理しています。

大会では金沢文化スポーツコミッションと協力して”文化×スポーツ”のコラボレーションを行っていますが、こうした取組をどう思われますか。

2019年9月「第95回日本選手権 水泳競技大会 飛込競技」 暗転した中横笛奏者・藤舎眞衣さんの勇壮な演奏で大会が開幕

1番大変だったのは横笛の演奏のとき。大会のオープニングセレモニーで全消灯してスポットライトを当てるということでした。照明をいきなり消してまた復旧できるのか心配でしたが、いろいろ相談して施設の特性上大丈夫ということでやりました。セレモニーの後すぐ試合が始まるので環境が変わっちゃうと困る、失敗できないということで私がやりました。他の大会では国歌独唱を飛込台で行う案もありました。歌手の方がドレスを着るということもあったけれど、飛込台は滑るし、けがをしたら大変ということでさすがに変更しました。
すごいことをいろいろ考えてくるなと思いますが、スポーツの大会で金沢の文化を取り入れるというのは素晴らしい。全国大会で出し物をする大会があるけどここまではない。オープニングセレモニーみたいなものはあっても、最近はあまり見なくなって、今は国体ぐらいじゃないでしょうか。金沢らしいおもてなしの心です。観客や選手はそういうのを見て「何かいつもの大会と違うぞ」となる。素晴らしいと思います。

  • 2019年3月「第41回JSCA全国マスターズスイミングフェスティバル」 プール中央での地元オーケストラ金管五重奏でオープニングを盛り上げ

  • 開会式ではソプラノ歌手・直江学美さんが国家独唱

  • 好きなお弁当に一票!”スポーツをがんばる人へのお弁当写真コンテスト”を実施

  • 金沢プールと大野町をつないで金沢のまちあるきを楽しむ企画 ”重ね捺しアート”のスタンプラリーも開催

合宿地としても人気の金沢プール。合宿に訪れる選手たちの声や、受け入れで気を配っていることを教えてください。

おかげさまでいろいろなチームが各地から合宿に来ています。スイミングスクール、大学、水泳連盟、地元団体や障害者の日本チーム、ナショナルクラスのチーム。東京オリンピックのときフランスとロシアの競泳・飛込チームも事前合宿をしましたし、海外のナショナルチームも来ます。プールがいい、アクセスがいいと言うリピーターが多いですが、全国的に50mの長水路のプール自体があまりなく、しかもオールシーズンやっているところは少ないので争奪戦です。合宿シーズンはゴールデンウィーク、8月初め、年末年始、23月。コンスタントに23団体、5月や年末年始だと6団体ぐらいが合宿に来ます。たくさん来てくれることは嬉しいですが、希望を聞いてもお断りすることもあります。
選手からはベストタイムが出やすい“高速プール”だと言われます。環境や空間の問題だと思いますが、特別変わった管理はしておらず、なぜかはわかりません。飛込でも台の広さで飛びやすい、飛びづらいがあります。感覚的なところで表現が難しいですが、選手曰く“あたりがいい”そうです。合宿では早朝練習もあって、朝6時からの練習のとき選手は5時半から入ってきて泳ぎ始めます。大会と違って長時間なので、施設として選手の体調管理や休憩スペースの確保に気を配っています。

  • 合宿で訪れたチームは競泳、飛込、アーティスティックスイミングなどさまざま

  • 世界で活躍するトップアスリートも合宿に訪れています

  • 2021年の東京オリンピックではフランスチームが事前合宿を行いました

2023年9月の”ジャパンマスターズ2023”では3,000名を超える選手が訪れます。大会や合宿で金沢を訪れる選手たちにメッセージをお願いします。

マスターズ大会では選手として泳ぎメインで来る方もいれば観光を楽しみに来る方もいらっしゃいます。金沢に来られるのであれば、いろいろなところに足を運んでいただいて、文化・スポーツという観点から金沢を楽しんでいただければと思います。全国からたくさんの人に来ていただいて、賑やかな大会になってくれると嬉しいですね。

 

関連リンク
▸金沢プール