金沢の郷土玩具で、“七転八起”にちなんだ縁起物、加賀八幡起上り。コロっと愛らしい姿が人気で、石川県のキャラクター、「ひゃくまんさん」のモデルにもなっています。2021年に開催されたウエイトリフティングとバドミントンの大会では、「中島めんや」さんにご協力いただき、体育館内で起上りへの絵付け体験教室を開催しました。
中島めんやさんに、加賀八幡起上りの由来や、大会での絵付け体験について感じたことなどをお聞きしました。
■お答えいただいた方
中島祥博(なかしまよしひろ)さん 中島めんや7代目
中島八依(なかしまやえ)さん 祥博さんの娘さん。起上り絵付け職人
加賀八幡起上りの由来・歴史を教えてください。
昔、加賀に一国一社の八幡宮があったんですが、八幡さんの祭神である応神天皇がお生まれになった時、赤いおくるみに包まれ顔だけを出した姿だったそうです。ある翁がこの姿を形どった人形を作り、子供の幸せを祈り配ったことが始まりと言われています。
加賀八幡起上りの特徴は、松竹梅が描かれていること、女顔のかわいらしい姿。江戸時代後期には既にあったそうで、その頃から文献に出てきます。当時はお正月の芝居や歌舞伎の最後に、豆まきのように起上り人形を舞台から撒いて配っていたそうです。また女の子が生まれた時には、箪笥に入れておくと着るものに不自由しないとされていました。現在のように家の中に飾るようになったのは大正・昭和になってからで、結婚や出産の際に贈られ、飾るようになりました。
全国的に知られるようになったのは、昭和30年に年賀切手に採用されたことからです。当時は郷土玩具を集めている人がたくさんいて、年賀切手に毎年郷土玩具が採用されていたそうです。
お店の歴史
1862年(文久7年)の創業当時は、ドサまわりの芝居のお面や玩具のお店として始まりました。中島めんやの「めんや」はお面のことなんです。その後主流は加賀人形になりましたが、時代に合わせていろんなものを取り扱っていました。今は加賀人形や加賀八幡起上りの他にも、加賀獅子頭、米食いねずみなどの郷土玩具を取り扱っています。郷土玩具の張子の虎などは特に、古い時代からあります。それぞれの人形や玩具に職人がおり、加賀八幡起上りは職人2人で作っています。
人気の“加賀八幡起上り”絵付け体験について教えてください。
15年以上前、平成半ばごろに全国に加賀八幡起上りを知ってもらいたいと始めました。起上りは金沢を代表するものでしたが、まだまだ知名度は低かったです。絵付けを楽しんでもらい、観光で来られた方、県内の方にもお土産に持ち帰りいただいたことで、魅力を広めてもらえたのだと思います。またお菓子などの商品パッケージとしていろいろなお店に使われ、知名度が上がってきました。
絵付け体験を始めた当初は宣伝もしていなかったので、体験者はひと月1~2人しかいませんでしたが、今では1日30~40人の方が体験に来られます。
スポーツ大会で選手に絵付け体験をしてもらいましたが、いかがでしたか?
スポーツ大会での絵付け体験は初めてでしたが、「七転八起」の精神で大会に臨む選手の皆さんを見て、せっかく金沢に来ていただいたのなら、金沢を知ってもらいたいし、街中を周ってほしいと思いました。選手の皆さんは、試合が一番の目的で来ていらっしゃるので、試合前後に金沢をまわる時間はないかもしれません。ですので、体育館の中で金沢らしいことを体験してもらい、金沢の思い出として楽しんでほしいと思います。次はプライベートで金沢に来てもらえると嬉しいです!