金沢の伝統工芸品、加賀友禅。京友禅・江戸(東京)友禅とともに、日本三大友禅と呼ばれています。
2022年に開催されたソフトボール大会では、奥田染色株式会社さんにご協力いただき、ソフトボール会場近くの工房で加賀友禅の型染め体験を開催しました。奥田染色さんに、加賀友禅の歴史やスポーツ大会×加賀友禅体験の取組について感じたことなどをお聞きしました。
■お答えいただいた方
奥田勝将(おくだかつまさ)さん 奥田染色株式会社 代表取締役・加賀友禅作家
奥田雅子(おくだまさこ)さん 奥田染色株式会社 加賀友禅作家
加賀友禅の歴史を教えてください。
約500年前、加賀独特の染め技法として、梅の皮や渋で布地を染めた無地染め「梅染」がありました。17世紀中頃になると、模様染めである「加賀紋」や「兼房染」の技法が確立されました。梅染・兼房染・加賀紋を総称して「お国染め」といい、加賀友禅の原点と言われています。これらの技法がほぼ確立した後、正徳2年(1712年)に京都で染色に携わっていた宮崎友禅斎が金沢の紺屋(藍染を主とした染屋)、太郎田屋のもとに移り住み、加賀友禅を発展させました。
扇絵師の宮崎友禅斎は出生地に諸説あり、能登とも京都とも言われています。身近な草花を描く斬新なデザインの模様染めを行い、友禅染の名前の由来ともなっています。
お店の歴史を教えてください。
この里見町には鞍月用水が流れ、「あかねや橋」という橋があります。加賀前田家5代の前田綱紀が但馬から招いた染物師、茜屋理右衛門がこの付近で茜染めを洗ったことから、あかねや橋と名付けられたそうです。鞍月用水は昔はもっと水の量が多く、このあかねや橋のあたりには多くの染物屋があり、用水で染物を洗っていました。
奥田染色はおよそ120年前の明治38年、あかねや橋のたもとで創業しました。昭和45年には、良質な白山の伏流水に恵まれた専光寺町に加賀友禅染色団地が誕生し、専光寺町に本社工場、里見町に工房を置いています。
創業当初は無地染めや、着物を反物に戻して洗い仕立て直す「洗い張り」を行っていました。終戦後は皆が華やかな着物を着るようになり、手描き友禅や型染めを始めました。時代に合わせ、お客様に喜んでいただけるものを取り扱ってきたことで、結果として加賀友禅が伝統として残ってきたのだと思います。
人気の加賀友禅の型染体験、手描き友禅体験について教えてください。
工房で体験プログラムを始めたのは4年ほど前ですが、その前からご要望があれば行っていました。手描き友禅や型染めのほか、消える染料の青花を使った体験プログラムなどがあります。型染の型については、創業時からこれまでにいろいろな形の型を作り、百種類以上の型が蓄積されています。型染め体験ではその型を実際に使い、巾着や風呂敷などを思い思いに染めていただけます。伝統の技に触れられる、金沢の思い出になるような体験の場にしたいと思っています。
工房のある里見町の区域は、武士系の屋敷が並ぶ静かな街並みが残る場所として、金沢市こまちなみ保存地区の第1号になった区域です。竪町商店街の通りから裏に一本入った場所ですが、繁華街と全く違う雰囲気になります。観光客の方々も、昔の街並みの雰囲気のなかで金沢の伝統的な体験を楽しめるとお話くださいます。
ソフトボール大会で、選手の方々に加賀友禅の型染め体験をしてもらいましたが、いかがでしたか。
選手や監督の皆様には、試合の合間に専光寺ソフトボール場すぐ近くにある本社工場に来てもらい、型染め体験をしていただきました。真剣な試合の合間に楽しんでいただけるのかと少し心配もしていましたが、選手やコーチなど皆さん楽しそうに染めてくださっていて、嬉しかったです。
今後も、金沢大会の思い出として残るような、スポーツと伝統工芸を組み合わせた取組ができたらよいと思います。気を張る試合の合間に、ちょっとリラックスして楽しんでいただきたいです。
関連リンク
奥田染色株式会社
金沢オープン小学6年生選抜ソフトボール大会(2021.11.6)